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- ウイスキーづくりにおける3つのこだわり -
一杯のウイスキーができるまでには、原料選びから熟成まで、さまざまな工程があります。
その一つひとつに、つくり手の想いや技術が込められています。
山鹿蒸溜所でも、「山鹿らしい味わい」を目指し、日々試行錯誤を重ねながらウイスキーづくりに取り組んでいます。
今回は、その中でも私たちが特に大切にしている「発酵」「蒸留」「熟成」の3つのこだわりをご紹介します。
普段飲んでいるウイスキーも、ものづくりの背景を知ると、きっと味わい方が少し変わるはずです。
ぜひ最後までお付き合いください。
① 発酵工程「様々な香味を引き出す酵母の組み合わせ」
ウイスキーづくりには、粉砕、糖化、発酵、蒸留、熟成など、さまざまな工程があります。
その中でも、ウイスキーの香りや味わいの土台をつくる重要な工程が「発酵」です。

糖化によってつくられた甘い麦汁(ばくじゅう)に酵母を加えると、酵母が糖分をアルコールへと変えていきます。
この働きを「アルコール発酵」といいます。
実は、この発酵で使う酵母の種類や組み合わせによって、完成するウイスキーの個性は大きく変わります。
山鹿蒸溜所では、一般的に多くの蒸留所で使われるディスティラリー酵母だけではなく、ビールづくりにも使われるエール酵母を組み合わせて発酵を行っています。
ディスティラリー酵母は発酵力が高く、安定してアルコールをつくることが得意です。一方、エール酵母は原酒に複雑なコクや旨み、豊かな香りを与えてくれます。
「なぜ、あえて複数の酵母を使うのか。」
その理由は、山鹿蒸溜所ならではの熟成環境にあります。
昨年10月に発売した「シングルモルトジャパニーズウイスキー山鹿 ザ・ファースト」の製造を通して、山鹿は原酒の熟成が比較的早く進む環境であることが分かりました。
熟成が早いということは、樽の個性が短期間で原酒に移りやすいということでもあります。
そのため、樽の風味に負けない、しっかりとした個性を持つ原酒づくりが必要になります。
そこで山鹿蒸溜所では、酒質のベースとなる2種類のディスティラリー酵母と、香りや味わいに厚みを出す3種類のエール酵母を組み合わせ、発酵方法を工夫しています。
現在は主に6種類の原酒を造り分けていますが、それぞれを異なる樽で熟成させ、さらにブレンドすることで、香りや味わいの可能性はさらに大きく広がります。
同じ「ウイスキー」でも、一つとして同じ味わいがない理由は、こんなところにもあるのです。
② 蒸留工程「軽やかさと複雑さを生み出す蒸留器」
発酵を終えた液体は、次に「蒸留(じょうりゅう)」という工程へ進みます。
蒸留とは、アルコールを熱して蒸発させ、その蒸気を冷やして液体に戻すことで、香りやアルコール分を取り出す工程です。
ウイスキー造りでは、この蒸留を「初留(しょりゅう)」と「再留(さいりゅう)」の2回に分けて行っています。
その中でも最大の特徴が、初留に「バルジ型」の蒸留器を採用していることです。

バルジ型は、蒸留器の途中に丸く膨らんだ部分があります。
ここでは蒸気が何度も行き来する「還流(かんりゅう)」という現象が起こります。
還流によって重たい成分は液体となって下へ戻り、軽く華やかな香りを持つ成分だけが蒸気となって冷却器に送られます。
山鹿蒸溜所の原酒は、軽やかでありながらも複雑な香りをあわせ持つ、エレガントな味わいに仕上がります。
山鹿蒸溜所のウイスキーを口にしたときのすっきりとした飲み心地は、この蒸留器の形にも秘密があるのです。

③ 熟成「栗樽・ワイン樽への挑戦」
ウイスキーの味わいを大きく左右する最後の工程が「熟成」です。
山鹿蒸溜所では、一般的なオーク樽だけではなく、地域の特色を生かした樽にも積極的に挑戦しています。

山鹿産の栗樽
熊本県山鹿市は、西日本有数の栗の産地として知られています。
現在は熊本県産の栗材を使った樽で熟成を行っていますが、私たちはさらに「山鹿らしさ」を表現したいという思いから、山鹿産の栗材だけを使用した樽の製作も準備中です。
山鹿の自然が育てた栗木で熟成したウイスキーを、いつか皆さまにお届けできる日を、私たちも楽しみにしています。
山鹿蒸溜所ならではのワイン樽
もう一つの特徴が、ワイン樽を使った熟成です。
山鹿蒸溜所では、グループ会社である高畠ワイナリーから樽を仕入れています。
また、地元・山鹿市にある菊鹿ワイナリーからもワイン樽を調達しています。
高畠ワイナリーは山形県にあるワイナリーで、国内外のさまざまなコンクールで高い評価を受けています。グループ会社だからこそ、高品質なワイン樽を安定して確保することができ、ウイスキーに濃厚な果実味と華やかな余韻を与えてくれます。
一方、山鹿市にある菊鹿ワイナリーは、特にシャルドネが国内外で高く評価されているワイナリーです。
立地が近いこともあり、ワインを樽から出した直後のフレッシュな樽に山鹿蒸溜所の原酒を詰めることで、ワイン由来のみずみずしい果実味や上品な甘さ、そしてエレガントな余韻がウイスキーへと受け継がれていきます。

山鹿らしさを、一杯のウイスキーに
発酵、蒸留、熟成。
どの工程にも、「山鹿だからこそできるものづくり」を大切にしています。
酵母の組み合わせで生まれる豊かな香り。
蒸留器が生み出す軽やかで繊細な酒質。
そして、栗樽やワイン樽を活かした山鹿ならではの熟成。
一杯のウイスキーには、そんな数え切れない工夫と挑戦が詰まっています。
もし山鹿蒸溜所のウイスキーを飲む機会がありましたら、ぜひその背景にも思いを巡らせながら味わっていただけるとうれしいです。
それでは次回のブログでお会いしましょう。