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ウイスキー職人の一日

山鹿蒸溜所公式ブログにアクセスいただき、ありがとうございます。
今回は「ウイスキー職人の一日」と題して、山鹿蒸溜所での日常的なウイスキー造りの風景を、写真と共にご紹介します。
ウイスキーづくりは、大まかに以下のような工程で進みます。
原料の粉砕 → 糖化(マッシング) → 発酵 → 蒸留 → 熟成
山鹿蒸溜所では、日常的な製造現場の仕事を、2つに分担しています。
●「仕込み担当」蒸留以前の工程を広く担当し、蒸留前の準備を整える
●「蒸溜担当(スチルマン)」蒸留を担い、その日の原酒の香味を決める
今回の記事では、それぞれの動きを追いながら、ある一日の製造の様子をご紹介します。
・8:30 始業/朝礼
全員で連絡事項の共有と配置の確認を行います。
【仕込み担当:原料の粉砕・糖化・発酵等、幅広く活躍するマルチワーカー】
・朝礼後 糖化工程開始
タンクや配管の洗浄が終わったら、前日に粉砕したモルト(大麦麦芽)と温水を混ぜて麦汁を造る糖化の工程がスタートします。
麦芽に含まれる酵素の力で、アルコール発酵に適した高糖度の麦汁をつくります。
・1番麦汁を発酵槽(ウォッシュバック)へ移送
最も糖度が高い1番麦汁は「バナナ」と同じくらいの糖度。
2番麦汁までがその日の仕込み分として発酵槽へと送られます。
同時に、アルコール発酵を開始するための酵母を投入します。
・翌日に仕込むモルトの粉砕
1回の仕込みにつき約1トンのモルトを使用しています。
粉砕にかかる時間は約1時間半。
2階建ての大きな粉砕機が活躍し、適切な粉砕比率になるようハスク(粗挽き)、グリッツ(中挽き)、フラワー(小挽き)の挽き分けを行っています。
・昼前頃 蒸留担当者と、発酵状況について打ち合わせ
発酵の状況について、分析値の確認と共有を行います。
・午後 糖化槽(マッシュタン)から麦芽粕の排出/脱水処理
麦汁を絞り終えた麦芽粕は、飼料として再活用するため脱水機にかけ、専用のフレコンバッグに入ります。
・粕出し作業終了後 糖化槽(マッシュタン)、配管等の洗浄、清掃
「製造の仕事の半分は清掃」というのが現場の合言葉です。
翌日の仕込みをスムーズに始められるよう、メンテナンスは欠かせません。
【蒸溜担当:熟成前の原酒、ニューポットを造る”スチルマン”】
・朝礼後 機械装置/検査機器の点検
アルコール度数の測定に使用する検査機器の校正等を行います。
・初溜もろみ送り
4日間発酵させたもろみ(発酵液)を初溜釜に送り、蒸留の準備をします。
・準備が整い次第 再溜釜・初溜釜を順に加熱開始
再溜釜にボイラーから蒸気を送り、加熱を開始。
もろみ送りが完了したら、初溜釜も加熱を開始します。
釜の温度上昇を待つ間に、空になった発酵槽の洗浄も進めます。
・午前中 ミドルカット
再溜液を、樽詰めに適した部分と翌日の再溜に使用する部分に分けます。
その日の原酒の香味を決定づける、蒸溜工程の中でも重要なポイントです。
ミドルカットと前後のタイミングの再溜液はサンプリングし、その日の蒸溜担当者以外も、手が空いたタイミングでテイスティングし、意見を出し合います。
ミドルカット後は、定期的なアルコール度数や温度測定を行い、蒸留の状況チェックを怠りません。
合間を見て、洗浄が終わった発酵槽をさらに熱湯で流します。
・昼前頃 仕込み担当者と、発酵状況について打ち合わせ
発酵の状況について、分析値の確認と共有を行います。
・昼前後 テールカット
雑味が多く含まれ始めるタイミングからタンクを切り替え、当日の樽詰め部分の香味を確定させます。
・夕方頃 蒸留終了
各タンク内の液量の測定後、蒸留釜の洗浄、清掃を行います。
初溜液(ローワイン)を洗浄が終わった再溜釜に送り、翌日の蒸留準備をしておきます。
・17:30 終業
お疲れ様でした。今日も良い原酒が出来ましたね!
いかがだったでしょうか。
蒸溜所見学の際には、今回の記事を思い出していただき、製造スタッフの動きにも注目してみてください。
「この時間はこの工程かな?」と想像しながら見学していただくと、さらに楽しんでいただけるはずです。
たくさんのご来訪を、スタッフ一同、心よりお待ち申し上げます。
それではまた、次回の記事でお会いしましょう。