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2023/08/21

第5弾ニューポットの軌跡

山鹿蒸溜所 広報担当の本坊です。
ブログ更新に少し時間をいただきました。お待ちいただき、ありがとうございます!
今回は現在発売している山鹿蒸溜所第5弾ニューポットができるまでのお話しです。

 

 

山鹿蒸溜所の年間仕込み期間は、おおよそ8月から6月になります。7月は設備のメンテナンスなどで仕込みは休止しています。

 

 

少し前のお話ですが、今年も6月末にシーズン最後の仕込みが行われました。(8月から新しいシーズンが始まっていますが、その試みはまた今度お話ししますね。)
休止前の最後のバッチをしっかり見届けたいと思い、日々の変化を写真に撮り、五感を研ぎ澄まして密着してみました。

 

 

さて、6月最後のバッチはピートモルトでの仕込みです。モルトを粉砕した瞬間から蒸溜所全体がピート香でいっぱいになりました。個人的には削りたてのかつお節の香りに感じられ、少し海辺の町を訪れた気分です。


(マッシュタンの中で粉砕したモルトとお湯を混ぜ合わせます。写真は一番麦汁を抽出し始めた頃。)

 

 

マッシング時の香りをあらためて感じてみると、甘く優しいモルティさがしっかりしています。もちろんピート香は特徴的ですが、麦汁も優しい甘味でほっとする味わいです。
麦汁は次々にウォッシュバックに送られ、酵母を加えることで発酵が始まっていきます。


(黄金色の麦汁が出来上がりました!写真は時間が経ってしまったため少し濁ってしまいましたが、しぼりたてはきれいに澄んでいます。)

 

 

2日目の朝、ウォッシュバックをのぞいてみると、しっかり発酵中。炭酸ガスで泡がブクブクとわいてます。アルコールが生まれていることを実感します。香りは爽やかで、わたがしのような甘さです。爽やかさは炭酸ガス由来もあるでしょうが、今回使用しているエール酵母の特徴でもあり、さっそく酵母の特性が現れていることに嬉しくなりました。


(発酵2日目のウォッシュバックの中をのぞくと…)

 

 

4日目の朝にはアルコール発酵も落ち着いてきたのか表情は穏やかで、ヨーグルトのようなミルキーさとリンゴジュースの酸味を感じます。
そして5日目の朝、初溜直前はモルティ、ヨーグルト、煮詰めたりんごの甘さ、そして酸味を感じます。期待通りの良い発酵をしてくれました。


(5日目の朝のもろみ。2日目と比べると別人のよう。)

 

 

そしてついに蒸留が始まります。初溜は泡が立ちますので、スチルマンは泡を高く上げつつ、コントロールに細心の注意を払います。初溜はフルーティーな香りが強く、今回はレモン、ぶどう、梨の香りが漂いました。いつもなぜか初溜は明るい気分になるのですが、このフルーティーさのおかげなのかもしれません。


(初溜釜の中で泡が高く上ります。)

 

 

次の日は製造最後の工程、再溜です。ミドルカットのタイミングを真剣に図るスチルマンの後ろ姿は、いつも頼もしくてかっこいいと感じるばかりです。香りと味わいと、アルコール度数に温度、蒸気圧、すべてに神経を研ぎ澄ましている職人の姿です。

 

 

今回ピートモルトを使用しているので、当然のごとくピート香が漂ってくるはずと思っていたのですが、はじめは全くその要素がない… びっくりしていると、ピート香は重たい成分のためミドルカットを行う前半ではあまり感じず、再溜の後半で出てくるとのこと。蒸留の世界の奥深さを知りました。
ミドルカット前後の香りは塩、スポーツ飲料、ラムネといった爽やかな香りで、こちらも今回使用している酵母の特徴がしっかり現れました。きっと蒸留の後半は火薬や煙のような香りが強くなるのだろうと、ずっと蒸溜器に張り付きたい気持ちを抑え、その場をあとにしました。


(再溜側のスピリットセーフ。)

 

 

そして出来上がったのが、現在発売している「YAMAGA DISTILLERY NEW POT Bottled 202307 #5 PEATED」です。磯の香りやローストナッツ、マスカットやキュウリといった、夏を感じるフレーバーに溢れています。その中にも山鹿蒸溜所らしくアーモンドミルクのようなミルキーさ、黒糖のような優しい甘さも加わり、樽熟成を経るとどのような原酒に変わるのか、今から楽しみなニューポットとなりました。初めてピートタイプのニューポットをお披露目しますので、ぜひこの機会にテイスティングされてみてください。


(第5弾ニューポット ピーテッド。現在山鹿蒸溜所ショップ、全国の酒販店様にて発売中。)

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